なぜ健康な人は“よく噛む”の?理想の咀嚼回数と7つの効果

こんにちは、健康管理士一般指導員の梅田(@umeda kouki)です。

突然ですが、あなたは普段の食事でよく噛んで食べる”という事を意識していますか?

現代の食生活では、ハンバーグやパスタ等の欧米食を始めとした柔らかい料理が増えた影響で、噛む事を意識する人は徐々に少なくなっています。

上記のグラフは弥生時代から現代までの一食分の咀嚼回数と食事時間を調査したものです。

グラフを見てもお分かり頂けるように、現代人の一回の食事での咀嚼回数は約600回。

およそ70年前の戦前の人と比べても半分以下しかありません。

しかし実は、しっかり噛んで食べる事は僕達の想像以上に重要な意味があります。

..そこで今回の記事では、噛む回数を増やす事で得られる健康効果、一口当たりの適切な咀嚼回数等の「咀嚼」に関する様々な情報を科学的な根拠とともにご紹介します。

1.よく噛む事で得られる健康効果

まずは、咀嚼によって得られる健康面でのメリットを7つお伝えします。

1-1.消化器官の負担を軽減する

咀嚼の主な目的は、消化器官の負担を軽くする事です。

胃に入るまでに食物を細かくすればするほど、胃腸への負担を軽減し、消化活動をスムーズに行えるようになります。

また、噛む回数を増やすと、脳にある「唾液核」を刺激させ、唾液の分泌を促進する事が可能です。

唾液には消化液の一種である「アミラーゼ」が含まれているので、食べ物を分解し、体内に吸収しやすくしてくれます。

逆に、咀嚼回数が少ないと飲み込んだ食物を分解するのに時間がかかり、強い酸性を持つ胃液が自身の胃壁も傷つけてしまうので、胃弱や胃腸炎を引き起こすリスクが高まります。

1-2.虫歯を予防する

食事の際によく噛んで食べていると、虫歯の予防効果が得られる事はご存知でしょうか?

咀嚼運動によって分泌が促進される唾液には、歯を硬くする作用を持つ「スタテリン」というたんぱく質が含まれています。

このスタテリンの働きによって、歯を丈夫にし、虫歯の原因菌である「ミュータンス連鎖球菌」に対しての抵抗力を高める事が可能です。

更に、唾液には歯の「再石灰化」を促進させる効果もあります。

“再石灰化”とは?

ミュータンス連鎖球菌が出す酸によって溶かされた歯を修復する機能の事です。

穴が開いていない初期状態の虫歯であれば、症状を改善させる事が出来ます。

つまり、よく噛んで食べる事は、ミュータンス連鎖球菌に対する抵抗力を高めながら、歯の修復機能まで向上させてくれるので、虫歯を防ぐ手段として有効です。

1-3.脳機能が向上する

咀嚼運動は、僕達の脳の活動と密接な関係があります。

咀嚼をする事で、脳神経の1つである「三叉神経(さんさしんけい)」が刺激されて脳の血流が増加します。

血流が増加すると、血液中に含まれる酸素やブドウ糖を脳細胞にしっかりと送り届ける事が可能です。

僕達の脳は、毎日千億個以上の細胞を長時間活動させているので、血の巡りを良くし、酸素やブドウ糖を供給する事は脳機能の向上に役立ちます。

実際に、「咀嚼」と「脳の働き」の相関について調査した実験データも存在します。

日本咀嚼学会が行った実験では、10秒間のガムの咀嚼を5回繰り返し、過程を観察すると、咀嚼中は脳の血流が上昇し、更に前頭前野が活発化している事が分かりました。

1-4.アルツハイマー病の予防効果がある

普段の食事で噛む回数を増やす事で、アルツハイマー病の予防効果が得られます。

アルツハイマー病の患者は脳の神経細胞の数が減少していて、特に減少傾向が強いのが、脳の「海馬」と呼ばれる部分です。

画像の赤い部分が海馬。

(画像出典:wikipedia

しかし、よく噛みながら食事をすると味や温度、触感を感知して脳の中枢に伝わり、海馬を刺激するので神経細胞を活発化させる事が出来ます。

海馬はたくさんある脳部位の中でも“記憶”に深く関わる器官なので、活発化させる事で記憶力の向上やアルツハイマー病の予防が可能です。

岐阜大学が行ったマウス実験では、「咀嚼運動が海馬の機能維持に重要な役割を果たしている」と発表しています。

1-5.ガンの予防効果がある

よく噛んで食事をする習慣は、ガンの予防に効果的です。

驚くべきことに、僕達が普段口にしている食品添加物や農薬には、発ガン性物質が含まれています。

しかし、咀嚼によって分泌が促進される唾液には、発ガン性物質の働きを抑える効果があります。

画像出典:NPO恒志会

上記は、元同志社大学名誉教授の西岡一氏が調査した発ガン性物質に対する唾液の抑制効果を表したグラフです。

このグラフで示されている「変異原性の強さ(突然変異コロニー数)」とは、発ガン性物質が細胞をガンにする毒性の強さの事です。

そして、調査結果を見ると、発ガン性物質の毒性が唾液処理によって大きく低下している事がお分かり頂けると思います。

つまり、食物をよく噛んで唾液の分泌を促進させると、発ガン性物質が出す毒性を打ち消す効果が得られるので、ガン発症のリスクを抑える事が可能なのです。

1-6.ストレス解消効果がある

実は、咀嚼運動は、ストレスを解消させる事も可能です。

僕達が日常的に感じているストレスには、脳の「偏桃体」が深く関わっています。

上記画像の赤い部分が偏桃体。

(画像出典:wikipedia

偏桃体は、感情や情動反応に関連する部位であり、過剰に働きすぎるとストレスホルモンが大量に分泌され、うつ病になる危険性もある程です。

しかし、偏桃体は、咀嚼によってストレスを感知する活動を抑制する特徴があります。

朝日大学は「咀嚼」と「偏桃体」の相関関係を調査した実験を行い、「被験者にストレスを与えると偏桃体の活動が増強されたが、咀嚼運動を行うと偏桃体の活動が緩和された」と発表しました。

更に、咀嚼には「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促進させる効果があります。

セロトニンは、ウォーキング等の一定のリズムを意識した「リズム運動」によって分泌される性質があり、咀嚼もセロトニンの分泌促進に効果的なリズム運動の1つです。

セロトニンが分泌されると、緊張や不安等のネガティブな感情を改善する事が出来ます。

1-7.肥満を防ぐ

普段の食事で食物をよく噛んでいると、肥満を防ぐ効果を得られます。

食物を噛み始めると感覚情報が脳の視床下部に伝達され、「神経性ヒスタミン」が分泌されます。

神経性ヒスタミンは、脳の「満腹中枢」の活性化を促す作用があるので、よく噛むと満腹感を感じやすくなり、「食べ過ぎ」や「大食い」を防いでくれるのです。

更に、神経性ヒスタミンは食欲を抑制するだけでなく、エネルギー消費を促進させ、内臓脂肪を燃焼させる働きもあります。(参考記事:花王健康化学区研究会:よく噛んで味わって食べる効用

結果的に、たくさん噛んで食べると満腹感を感じやすくなり、同時に脂肪の燃焼も行えるようになるので、肥満を未然に防ぐ事が可能なのです。

2.どれくらい噛めばいいの?

咀嚼による健康効果を得る為には、食物をたくさん噛む必要がありますが、「具体的に何回位噛めばいいの?」という疑問があると思います。

そこで、このパートでは、適切な咀嚼回数について詳しく解説していきます。

2-1.液体になるまで噛む

食べ物を消化をしやすくする為に必要な咀嚼回数は、「一口につきおおよそ30回」です。

しかし、厳密に言えば、適切な咀嚼回数は食品によって異なります。

例えば、豆腐やアボガド等の柔らかい食品は、20回程度噛むと口の中から無くなってしまったり、味が感じられなくなる事もあると思います。

しかし、反対に餅や煎餅、ナッツ類等の硬い食べ物は、飲み込める状態の食塊にするまで30回以上の咀嚼が必要になるかもしれません。

その為、咀嚼する際は、全ての食品に共通して液体に近くなるまで噛む”事をお勧めします。

目安となる回数はあくまで「一口につき30回」ですが、咀嚼において重要なのはしっかり噛み砕いて飲み込みやすい状態を作る事です。

ですので、基本的に食べ物は、液体状になるまでしっかり噛んでから飲み込んで下さい。

3.咀嚼回数を増やす為の工夫

「噛む回数を増やそうとは思うけれど、中々意識出来ずに難しい‥」と感じる方もいらっしゃると思います。

このパートでは、咀嚼回数を増やす為の簡単な工夫についてお伝えしますので、是非参考にしてみて下さい。

3-1.噛み方を変える

まずは、噛む回数を増やし、咀嚼による健康効果を得る為に以下の方法をご紹介します。

  1. 右側の歯で5回噛む
  2. 左側の歯で5回噛む
  3. 1と2を2回繰り返す
  4. 最後に両方の歯で10回噛む   

この方法は、日本咀嚼学会の理事長である斎藤滋氏が自身の著書でも推奨している効果的な噛み方です。

よく噛んで食べる―忘れられた究極の健康法 (生活人新書)

この噛み方であれば、適切な咀嚼回数の目安である「一口につき30回」をクリアする事が出来、多くの食品を安全な形で飲み込めるようにもなります。

3-2.一口の量を少なくする

一口の量を減らしてみると、自然にしっかりと咀嚼出来て、食物を飲み込みやすくなります。

逆に、一口の量が多いと、咀嚼を余裕を持って行えない為、噛む回数が不十分のまま飲み込んでしまいがちです。

実際に、咀嚼回数と一口の量の相関関係を調査した帝塚山大学の実験によると、一口に食べる量を少なくするように指示すると、総咀嚼回数は1.3~2.0倍に増加しました。

また、同じ実験で被験者にアンケートを実施すると、一口の量を減らす事は約70%の人が「実行しやすい」と答えています。

3-3.食事時間を多めにとる

噛む回数を増やす為には、食事時間を多めにとる必要があります。

たくさん噛む事を意識していても、時間に追われて慌てながら食べていては、咀嚼が十分に出来ない可能性が高いです。

また、間髪入れずに食品を胃の中に送り込む「早食い」は、消化にとっても良くありません。

食事の際は、一食につき最低でも20分かけ、ゆっくり噛みながら食べましょう。

3-4.水で流し込まない

食事中に水や汁物で食べ物を流し込まないように気をつけましょう。

流し込みながら食べてしまうと、咀嚼が十分に出来ず、食物を固形のまま飲み込んでしまう可能性が高いです。

また、食事中に水を飲むと、胃液が薄まってしまい消化活動を邪魔していまいます。

咀嚼中は水を飲まず、しっかりと液体状になるまで噛んでから食物を飲み込んで下さい。

まとめ

今回は、よく噛んで食べる事の重要性や必要な咀嚼回数についてご紹介させて頂きました。

いかがだったでしょうか?

普段の食事からよく噛んで食べる事を意識するのは、素晴らしい習慣だと思います。

また、しっかり咀嚼して食べると胃腸に余計な負担をかけないので、食後に眠くなる事もなくなり、最終的に日中のパフォーマンス向上にも繋がります。

今回ご紹介した咀嚼に関する情報を、是非あなたの毎日に役立てて頂ければ嬉しいです。

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